木々が染まる季節。四季を通じてそれぞれの美しさがある京都の中でも、嵐山・嵯峨野の紅葉は特別の輝き。京都の伝統と美意識が司るこの場所で、世界遺産に足を向け、竹林からの風に吹かれれば、深紅が彩る世界に心は遊ぶ。いにしえの時代が見える紅葉絵巻を受け取って、さあ、美しい京都へ。
世界遺産の感動、天龍寺に響く
時を越えて立ち昇る
圧倒的な荘厳の美
臨済宗天龍寺派の大本山であり、室町時代に足利尊氏を開基とし、夢窓疎石を開山として創建した歴史を誇る天龍寺。八回の大火に見舞われ、現在の堂宇の多くが明治期の再建だが、その壮麗さに今も名刹の名は揺るぎない。広大な寺領をめぐる参拝コースは散策の時期を選ばないスケールの大きな名勝ばかりで、隅々まで静謐な美しさが満ちる。中でも夢窓疎石の作である庭園の曹源池は、見る者の心をしんと打つ、美しいという言葉だけでは表せない硬質な美趣があり、これからの季節は池の水面に映る紅葉が幽玄の世界を作り出す。国の史跡・特別名勝第一号に指定、一九九四年には世界文化遺産に登録されている。
↑→大方丈の正面。ここから庭園参拝がスタートする。この位置から襖の間に覗く庭園もまた素晴らしい。
(写真上)大方丈より特別名勝・曹源池を眺める。池の面の美しさに我を忘れ、澄み切った思いが全身に満ちる。ゆっくりと腰を落ち着けてその趣きを楽しみたい。
紅葉に誘われる
名刹の散策
四季折々の美しさを見せる庭園の参拝コースは、時間を忘れ、静かに想いをめぐらせながら散策をしてほしい場所。苔と樹木の緑はもちろん美しいが、この紅葉の季節の格別さは言わずもがな。紅葉の名所として人気があり混雑が予想されるが、8時30分から参拝できるので、おすすめは朝。早起きして見に行く価値は必ずある。
↑白壁が美しい書院。参拝コースに沿って、書院の横を通り抜け、さらに多宝殿の方面へと歩く。書院から多宝殿へは長い回廊で結ばれ、これも見所のひとつになっている。
↑ここ多宝殿は後醍醐天皇が幼少の頃に勉学に勤しんだ場所で、現在ではその聖廟として像が安置されている。火災に見舞われ昭和9年に再建されたが、鎌倉時代の様式が取り入れられ、十分に当時を忍ばせている。
←曹源池の水面に映る紅葉の美景は今だけの贅沢。静かにじっくりと鑑賞したい。
天龍寺
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
TEL 075-881-1235
参拝時間 8:30〜17:00
料金 庭園500円(諸堂参拝は100円追加)
JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅より徒歩13分
竹林と苔の鮮烈な趣が 平安の美を今に伝える 「野宮神社」
その昔、天皇の代理で伊勢神宮にお仕えする斎王が伊勢へ行かれる前に身を清めたという野宮神宮はえんむすび、子宝安産、進学の神様。有名な小柴垣や黒木の鳥居の壮麗さからは聖地としての風情が窺い知れ、嵯峨野の竹林の清々しい緑の中でその美を今に伝えている。中でも芭蕉や蕪村の句に詠まれ、源氏物語の中でも描かれた苔の庭園の美しさは京都随一。雨上がりの露に濡れた豊かな苔はまた格別で、じゅうたんを敷きつめたようなその様は絵巻物さながらだ。
↑野宮神社に通じる嵯峨野の竹林の美しい小径。
↑神社のシンボル、黒木の鳥居。紅葉シーズンのコントラストはまた見事。
↓ずっと大切にしたくなるかわいいおまもり。
野宮神社
京都市右京区嵯峨野宮町1番地
TEL 075-871-1972
参拝時間 9:00〜17:00/参拝自由
京福電鉄嵐山線「嵐山」駅より徒歩5分
http://www.nonomiya.com/
京都情緒にとけこむ 雅やかな湯豆腐専門店 「湯豆腐 嵯峨野」
やっぱり湯豆腐。
天龍寺境内近く、嵐山の大通りを入ったところにある湯豆腐の専門店「嵯峨野」。数奇屋風の純日本建築は雅やかな佇まいで、閑静な風景にしっとりと溶け込む。料理には京都伝統の嵯峨豆腐を使い、一品一品コースで出てくる料理には工夫が凝らされて豆腐の味の多様さに驚くが、湯豆腐で味わうと味にごまかしが効かないだけにその美味しさがよくわかる。元々は料理旅館だったということで部屋は各室分かれていて、そこから眺める庭がまた素晴らしい。京都情緒あふれるお店で湯豆腐。嵐山に来てこれを味わない手はない。
↑二階の部屋から見た庭。名勝嵯峨野の端正な美景を閉じこめたかのような素晴らしい眺めだ。純日本家屋と庭園は時代劇の撮影にも使われるとか。
湯豆腐 嵯峨野
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町45
TEL 075-871-6946
営業時間 11:00〜19:00(L.O.)
定休日 12/30〜1/1・7月 第4水曜日・第4木曜日
JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅より徒歩10分
京福電鉄嵐山線「嵐山」駅より徒歩5分
http://r.gnavi.co.jp/k036300/
↑湯豆腐3800円は、湯豆腐・野菜の天ぷら・ひろうす・ごま豆腐・温泉玉子・刺身こんにゃく・佃煮・ごはん・お漬物・デザートと、豆腐料理を中心にした全10品の充実のコース料理。嵯峨豆腐を使うのは京都ならではの味覚だ。
茅葺き屋根の町並みに いにしえ息づく鳥居本
「あだしのまゆ村」
嵐山から寺社やお店を見ながら歩いて30分ほどの鳥居本は、今も茅葺き屋根の民家が残り、国の重要伝統的建物群保存地区に指定されている。その中にあるこのお店は日本中、いや世界中でもおそらくたった一軒の繭人形の専門店。ところ狭しと並んだ人形はすべて「まゆ村」村長の手作りで、ほっとする愛らしさだ。お肌がツルツルになる繭もあり、こちらも女性にはぜひおすすめしたい。
京都市右京区嵯峨鳥居本化野町12-11
TEL 075-882-4500
営業時間 9:00〜17:00
定休日 なし
http://www.mayumura.com/
通りに面したところにはまゆ村の出店も。かわいい提灯が目印。この近くの階段を上ると本店へ。
↑手作りの繭人形が並ぶメルヘンの世界に心が安らぐ。ここで一服お茶のサービスも嬉しい。
↑お肌がツルツルになる繭。特に女性は必見!
↑威風堂々の茅葺屋根の下、のれんも風格。緋毛氈の縁台に腰掛けて桜もちをいただけば、京都小町を気取って、まるで映画のワンシーン。
「鮎の宿 つたや」
茅葺屋根の老舗料亭で味わう
京情緒と桜もち
一の鳥居のすぐ下、茅葺屋根の存在感が築四〇〇年の歴史を感じさせる鮎の宿つたやは、紅葉の季節は湯豆腐、冬はカニ、フグ、ぼたん鍋などの京懐石店。料亭としてのほか、味わってもらいたいのが桜もちとおうすのセットだ。坂道の途中で足を休めてほっと一息。京風情を味わって。
京都市右京区嵯峨鳥居本仙翁町
TEL 075-871-3330
営業時間 11:30〜18:30(L.O.)
定休日 不定休
↑桜もちとおうすのセット840円。塩漬けされた大きめの桜の葉に白い桜餅はふわっといい香りで、桜の時期じゃなくても食べたくなってしまう人気の品。
無縁仏に手を合せ 来し方を思う竹林の階段 「化野念仏寺」
化野念仏寺
化野は兼好法師や西行法師も人の命のはかなさをその句に詠んだ葬送の地。化野念仏寺の西院の河原では、毎年八月に千灯供養が行われ無縁仏を供養する。石仏にろうそくを灯して行う千灯供養はガイドブックにも取り上げられる有名な行事だが、「無縁仏といってもどこかで自分に縁のある人もいるのでは」という住職の言葉はさすがに深い。物見の気持ちではなく、ぜひ供養の気持ちで訪れてほしい。また、ここの竹林の美しさは京都でも屈指。竹に囲まれた階段を歩いていると、幻想の世界に吸い込まれそうだ。
京都市右京区嵯峨鳥居本化野町17
TEL 075-861-2221
拝観時間 9:00〜16:30(受付終了)
料金 500円
京都バス 「鳥居本」バス停より徒歩5分
http://www.nenbutsuji.jp/
↑たくさんの石仏が並ぶ西院の河原。三途の川の逸話にある賽の河原に模してこの名がついた。
←竹林に囲まれた階段はまるで異世界へ迷い込むよう。笹の葉ずれの音や木洩れ日に世俗を忘れる幻想的な空間だ。