株式会社 「油正」
裸電球だけが灯る、ひっそりとした酒蔵は、足音一つが響き渡るような凛とした冷たい空気に満ち、つい先ほどまでの外の世界とは隔離されたような厳粛な別世界が広がる。そこに並ぶ数々のタンク。この「油正」の蔵へ運ばれてきた選びぬかれた素材が、今まさにタンクの中で醗酵しブツブツと音を立て、美酒へと生まれ変わろうとしていた。

津市久居本町。少し静かな路を入ると、一画に黒壁の蔵が現れる。なんの蔵だろうと看板のある玄関に辿りついたところで、熟したような茶色をした「杉玉」を見つけて納得した。こちらが造り酒屋の「油正」である。「杉玉」とは「酒林」のこと。杉の穂先を集めた球状の飾りは、酒蔵の軒先に欠かせない。酒造の神、松尾様への感謝を捧げる神聖な「酒林」が導くかのように、我々は銘酒が眠る酒蔵へと案内された。
久居台地から湧き出る、布引山系雲出川の伏流水が、酒造仕込水として好適であり、くわえて豊穣な一志平野で収穫される「一志米」が粘りがあり、高精白に向く。そして但馬杜氏のひたむきで丹念な作業。そうやって命を吹きこまれた酒は、この蔵だからこそ生まれる味となる。
「油正」の酒の味は、懐が深い、と聞いたことがある。目が覚めるような知的さまで感じさせる吟醸酒。コクと個性が奏でる純米酒。それは、日本酒党以外の人々をも魅惑する懐の深さでもある。
折りしも、今は春。今宵は、花を愛でつつ、仲間と酒でも交わそうか。
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タンクの中の醪(もろみ)。小さく泡だっている。この状態(上貌)もそれぞれの糖化と発酵の進み具合によって変化する。そこで定期的に醪のサンプルを採取して分析するが、「油正」さんでは毎日分析するという徹底した品質管理を行っている。
真摯に酒造りと対話するその姿勢が銘酒を醸す
朝四時から作業は始まる。微妙な温度管理が重要となる酒造り。気温が低く空気が澄んだ早朝からの作業が大切だという。そう淡々と語る姿に職人気質を感じさせる「油正」の杜氏さんは、但馬杜氏。但馬杜氏は南部杜氏、越後杜氏と並び三大杜氏と言われ、その粘り強い精神力と確かな技術力は、全国で活躍し高く評価されている。
十月から三月まで、杜氏さんが蔵に入り泊り込みで酒を仕込み面倒を見る。特に今年は暖冬で、微妙な温度管理には苦労したという。少しの温度変化も見逃さない杜氏さんの努力が、「油正」の味を守り続け、さらなる美酒を生むのだろう。
十一月に初絞りがあり、毎年十一月二十三日に蔵開きが行われ、顧客の方々に新酒の味見をしてもらう。その時には、当日絞った酒「あらっぱしり」も試飲できる。実は取材当日も、「あらっぱしり」を試飲させていただいた。薄い琥珀色のような外観と、果実を漂わせる豊かな口当たりに、十分その実力を感じた。そして同時に、杜氏さんの実力も痛感した次第である。

世代を超えて愛される、まさに懐深い、きれいな味わい。
日本酒というと、こてこての和食など、少しオヤジくさいと思われるかもしれない。しかし、最近ではモダンな和食や、イタリアン・フレンチなどに合わせて「日本酒」を楽しむ女性を中心とした若い世代が増えている。「油正」さんでは、「初日」の純米酒が幅広く人気だそうだ。純米酒は米の旨味を引き出した、個性的な味だ。ただ、やはり「大吟醸」の淡麗な味わいは格別。気分や料理に合わせて、飲み比べてみるのも粋だ。
←昔ながらの佇まいは、明治2年創業からの酒造りの歴史を見守り続けた風格を感じさせる。酒蔵の一部は一般にも公開されているので、興味のある方は訪ねてみてはいかがだろう。商品も販売されている。試飲会は年に19回行われているそうで、予約制となっている(有料)。また、ノスタルジックな酒蔵の雰囲気と、音の反響する空間を生かして、毎年恒例で胡弓のコンサートが開かれている。
【試飲会・コンサート問い合わせ先】 TEL059-255-2007
↓杜氏さん。「油正」の美酒を醸し、但馬杜氏としての品格を漂わす。
タンクの中の醪(もろみ)。小さく泡だっている。この状態(状貌)もそれぞれの糖化と醗酵の進み具合によって変化する。そこで定期的に醪のサンプルを採取して分析するが、「油正」さんでは毎日分析するという徹底した品質管理を行っている。
「初日 純米大吟醸」1.8・ 8,500円
「初日 大吟醸」1.8・ 8,000円
「初日 大吟醸仕込 初しぼり」1.8・ 6,000円
「初日 純米酒」1.8・ 2,136円
株式会社 油 正
三重県津市久居本町1583番地
TEL 059-255-2007
FAX 059-255-3006
Mail-Address:info@abusyou-hatsuhi.co.jp

株式会社 油正
三重県津市久居本町1583番地 TEL 059-255-2007
FAX 059-255-3006
Mail Address info@abusyou-hatsuhi.co.jp